神様修行はじめます! 其の五
そうして今、この三人の隣にはそれぞれが居て。
こうして肩を並べて、癒しの雨に身を晒し、互いを労わり合うように微笑み合っている。
なら、いいんじゃないかな?
この三人が選んだ道はこれでいい。きっとこれからも、この先へ進んでいける。
そしてまたどこかへ向かう途中で、こんな思いがけない贈り物のような美しい雨に癒される日が、きっと訪れる。
そんな未来を信じられるんだ。
「アマンダ、それでは今日はこれで失礼しますわ」
「失礼致します。天内のお嬢様」
「天内さん、また明日」
今日のいとまを告げる三人に、あたしは縁側に座ったまま笑顔で手を振った。
「うん。また明日」
あの日、黄昏色の別れ道で、口に出せなかったこの言葉。
あの時と場所や相手は違えど、望んだ言葉を望むままに言える今日を、あたしは嬉しく思う。
お岩さんたちを見送ってから、ひとりになったあたしはフッと小さく息を吐いて、中庭をゆっくりと見渡した。
いつの間にか、天気雨はもう止んでいる。
夏の間に勢いよく伸びた庭木。苔むした味わいのある石灯籠。調和のとれた敷石の並び。
わずかに濡れたそれらが、まるで幻のように一瞬だった通り雨の名残りを残していた。
……以前は、ここにしま子がいた。
専用の特大エプロンを身につけて、竹ぼうきを持って、かいがいしく庭掃除をする赤鬼の幻が見える。
懐かしさと悲しみの混じった胸の痛みを堪えながら、あたしは、愛しいその名をそっと口にした。
「……しま子」
ねぇ、しま子。
こっちを向いて。
お願い。返事をして。
そしてあたしに、あの日のようにまた花を差し出してよ……。
『うあぁ~』
振り向いたしま子が、真ん丸な目を細めてニコリと笑う。
その笑顔に向かって手を伸ばしたら、しま子の姿は消えてしまった。
こうして肩を並べて、癒しの雨に身を晒し、互いを労わり合うように微笑み合っている。
なら、いいんじゃないかな?
この三人が選んだ道はこれでいい。きっとこれからも、この先へ進んでいける。
そしてまたどこかへ向かう途中で、こんな思いがけない贈り物のような美しい雨に癒される日が、きっと訪れる。
そんな未来を信じられるんだ。
「アマンダ、それでは今日はこれで失礼しますわ」
「失礼致します。天内のお嬢様」
「天内さん、また明日」
今日のいとまを告げる三人に、あたしは縁側に座ったまま笑顔で手を振った。
「うん。また明日」
あの日、黄昏色の別れ道で、口に出せなかったこの言葉。
あの時と場所や相手は違えど、望んだ言葉を望むままに言える今日を、あたしは嬉しく思う。
お岩さんたちを見送ってから、ひとりになったあたしはフッと小さく息を吐いて、中庭をゆっくりと見渡した。
いつの間にか、天気雨はもう止んでいる。
夏の間に勢いよく伸びた庭木。苔むした味わいのある石灯籠。調和のとれた敷石の並び。
わずかに濡れたそれらが、まるで幻のように一瞬だった通り雨の名残りを残していた。
……以前は、ここにしま子がいた。
専用の特大エプロンを身につけて、竹ぼうきを持って、かいがいしく庭掃除をする赤鬼の幻が見える。
懐かしさと悲しみの混じった胸の痛みを堪えながら、あたしは、愛しいその名をそっと口にした。
「……しま子」
ねぇ、しま子。
こっちを向いて。
お願い。返事をして。
そしてあたしに、あの日のようにまた花を差し出してよ……。
『うあぁ~』
振り向いたしま子が、真ん丸な目を細めてニコリと笑う。
その笑顔に向かって手を伸ばしたら、しま子の姿は消えてしまった。