神様修行はじめます! 其の五
「ほおう? 『花嫁候補様』とおっしゃるならば、しかたございませぬなあぁ?」
ずっと伏し目がちに頭を下げていたオヤっさんが、あたしの必殺技に反応してパッと顔を上げた。
「当主様には、我らが小浮気の長の娘がお側仕えをしております。名を水園(すいえん)と申しまして、稀代の才媛にございます」
その妙に含みのある口調が、あたしは引っかかった。
小浮気一族の、長さんの娘? あのクレーター頭に娘さんがいたの?
……なんでその娘さんのこと、そんな最高の隠し玉を披露するような顔して言うわけ?
「我ら一族が誇る水園が、当主様のあらゆるお世話を、ひとりで務めておるのです」
オヤっさんが、あたしの怯んだ様子を見逃さずに速攻で攻めてきた。
まさかの爆弾発言に、さすがにあたしも驚いて思わず聞き返してしまう。
「え? ひ、ひとり!? 門川君の世話係って、まさかその女の人ひとりなの!?」
ね、ねぇ? それって……
小さな庵の中に、門川君とその女の人の、ふたりきりで過ごしてるってこと?
「もちろん数名が務めておりましたが、当主様がことのほか、水園をお気に召したご様子でして」
一気に不安に染まるあたしの顔を見たオヤっさんは、ますます得意そうな表情になった。
「世話係は水園ひとりだけで良いと申されて、みずから他の者を遠ざけてしまわれたのです」
「…………」
「当主様は片時も水園を手放そうとせず、ふたりはまるで夫婦のように仲睦まじ……あ、いやいや、これは失言」
「…………」
「まあ、無理もないでしょうなぁ。沈魚落雁の美貌と謳われる水園と、ひとつ屋根の下とあらば、当主様とてひとりの男……」
「…………」
「あ、いやいやいや! またしてもこれは失言! どうかお聞き流しのほどを!」
ずっと伏し目がちに頭を下げていたオヤっさんが、あたしの必殺技に反応してパッと顔を上げた。
「当主様には、我らが小浮気の長の娘がお側仕えをしております。名を水園(すいえん)と申しまして、稀代の才媛にございます」
その妙に含みのある口調が、あたしは引っかかった。
小浮気一族の、長さんの娘? あのクレーター頭に娘さんがいたの?
……なんでその娘さんのこと、そんな最高の隠し玉を披露するような顔して言うわけ?
「我ら一族が誇る水園が、当主様のあらゆるお世話を、ひとりで務めておるのです」
オヤっさんが、あたしの怯んだ様子を見逃さずに速攻で攻めてきた。
まさかの爆弾発言に、さすがにあたしも驚いて思わず聞き返してしまう。
「え? ひ、ひとり!? 門川君の世話係って、まさかその女の人ひとりなの!?」
ね、ねぇ? それって……
小さな庵の中に、門川君とその女の人の、ふたりきりで過ごしてるってこと?
「もちろん数名が務めておりましたが、当主様がことのほか、水園をお気に召したご様子でして」
一気に不安に染まるあたしの顔を見たオヤっさんは、ますます得意そうな表情になった。
「世話係は水園ひとりだけで良いと申されて、みずから他の者を遠ざけてしまわれたのです」
「…………」
「当主様は片時も水園を手放そうとせず、ふたりはまるで夫婦のように仲睦まじ……あ、いやいや、これは失言」
「…………」
「まあ、無理もないでしょうなぁ。沈魚落雁の美貌と謳われる水園と、ひとつ屋根の下とあらば、当主様とてひとりの男……」
「…………」
「あ、いやいやいや! またしてもこれは失言! どうかお聞き流しのほどを!」