神様修行はじめます! 其の五
 恐縮してるフリをしてるオヤっさんの全身から、バリッバリの優越感モードが放出されている。


 対してあたしはと言えば、強張った表情のまま唇を固く結んで、ひと言もしゃべることができないでいた。


 まるで深海みたいに重力がグッと重く感じられて、肺が潰れたように息苦しい。


 ……そうか。そうだよね。考えが浅かったよ。


 小浮気一族も有力一族なんだもん。長に娘がいるなら、こんな絶好のチャンスを逃すはずないじゃん。


 他の一族からのジャマが入る心配のない状況で、門川君と自分の娘を、ベッタリ接触させられるんだから。


 彼と離れ離れになってしまう不安と寂しさで頭がいっぱいで、そのことまで気が回らなかった。


「小娘」


 知らず知らずのうちに、ギュッと握りしめていたあたしの拳に、柔らかい物が触れる感触がした。


 あたしの手の上に絹糸が自分の小さな手を乗せて、心配そうにジッと見上げている。
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