神様修行はじめます! 其の五
「うん、大丈夫だよ」
あたしは唇の両端をグッと持ち上げながら、そう言った。
だってあたしにできることは、信じて待つことだけなんだから。
門川君がくれた言葉。門川君がくれたキス。
彼がこれまで、あたしに与えてくれた物ぜんぶぜぇーんぶを、信じること。
もちろん、不安はあるよ。本音を言えば今すぐここから飛び出して、庵に向かって全力疾走したい気分。
でもさ、そうするよりもあたしは、門川君のことを信じたいんだ。
「だからあたしは、門川君を信じて待つよ」
「さすが『花嫁候補様』は、お心が広くておいでになる」
かすかに笑いを含んだ声が聞こえて、絹糸がチラリと視線をそちらへ向けた。
視線の先には、相変わらずトップ独走状態の、余裕しゃくしゃく顔のオヤっさんが。
もうゴールテープは目前気分で、テープカット用のハサミを手にして競技場トラックを走っている心境なんだろう。
「ご正室以外にも側仕えの女はおりますからなぁ。身分のない女性にも、平等な機会が与えられることは、大変喜ばしい」
正室以外の側仕え。それはつまり、愛人ってことだ。
あたしは唇の両端をグッと持ち上げながら、そう言った。
だってあたしにできることは、信じて待つことだけなんだから。
門川君がくれた言葉。門川君がくれたキス。
彼がこれまで、あたしに与えてくれた物ぜんぶぜぇーんぶを、信じること。
もちろん、不安はあるよ。本音を言えば今すぐここから飛び出して、庵に向かって全力疾走したい気分。
でもさ、そうするよりもあたしは、門川君のことを信じたいんだ。
「だからあたしは、門川君を信じて待つよ」
「さすが『花嫁候補様』は、お心が広くておいでになる」
かすかに笑いを含んだ声が聞こえて、絹糸がチラリと視線をそちらへ向けた。
視線の先には、相変わらずトップ独走状態の、余裕しゃくしゃく顔のオヤっさんが。
もうゴールテープは目前気分で、テープカット用のハサミを手にして競技場トラックを走っている心境なんだろう。
「ご正室以外にも側仕えの女はおりますからなぁ。身分のない女性にも、平等な機会が与えられることは、大変喜ばしい」
正室以外の側仕え。それはつまり、愛人ってことだ。