神様修行はじめます！ 其の五

「なにが起こったのよ！？　まさか異形に襲われたの！？　門川君は無事！？」


　一足飛びに小浮気の人たちの所へ駆け寄って、そのうちの一人の襟首を引っ掴んで叫び散らした。


　でも彼らはお互いに助けを求めるように顔を見合い、そのまま視線を逸らしてうつむいてしまう。


「ちょっと！　ウブな少女みたいにうつむいて黙りこくってないで、門川君はどうしたのか答えなさいよ！」


　ツバを飛ばして怒鳴っても、みんなあたしの顔を見ようともしない。


　いかにも気まずそうに、オロオロふわふわ視線を泳がせてシラをきるばかりだ。


「な、なんのことだか？　我らはさっぱりわからぬ」


　そのセリフ、そっくりそのまま至近距離から全力で投げ返したるわ！


　あんたが答えてくれなきゃ、彼の身に何が起こったのか、さっぱりわかんないんだよ！


「彼が危険なら、あたしが助けに行く！　だから言いなさい！」


「………」


　でも彼らは頑なに口を閉ざして、あたしから目を逸らし続けるばかり。


　その様子から、事態はよっぽど言い出しにくい深刻な状況なんだってことが、ひしひしと伝わってきた。


　もう、マジで焦ったあたしは、襟首を掴んでいる両手に遠慮なく力を込めながら、再び大声で怒鳴り散らす。


「言えってのぉぉ！　こらあぁぁ！」


「ぐ、ぐはぅっ！　くぅ、くぱっ」


「断末魔の金魚かお前は！　上向いて息ばっかり吐き出してないで、言語を吐け！　言語を！」


「く、苦し……は……吐く、吐く……うぇぇ」


「よぉし吐け！　そのまま吐けぇぇ！」


「天内のお嬢様、どうか落ち着いてくださいませ」


　あたしの拳に、大きな手がそっと重ねられた。


　夢中で小浮気の人の襟を絞めているあたしの拳を、セバスチャンさんが静かに引き離していく。