神様修行はじめます! 其の五
 知的な大学教授が講義しているみたいに、穏やかな表情で、殺人技を淡々と披露しているセバスチャンさん。


 見惚れるほどの美貌と、やってることの凄惨さのギャップ度が容赦なさすぎて、この人ホントに素敵すぎるわ……。


「よろしいですか? あとは何度か回数をこなせば、殺さない程度に、死ぬよりつらい苦しみを与える最適な力加減が体得できますので……」


「こりゃ遥峰、ぶっそうな技を伝授するでないわ」


 そこで絹糸が、呆れ声で割って入った。


「小娘に凶器を与えるでない。バカに刃物という言葉を知らんのか? あと、そやつを放せ。死んでしまうわい」


 締め上げられている人の顔が、真っ赤に染まっている。


 というか、うわ……もうドス黒いよ。濃厚な血の色だよ。


 もうこれ、完全に血流が首のところで停止して溜まってるよ。


 白目剥いてるし、口からはガチョウみたいな鳴き声が聞こえてるし、全身震えてヨダレ垂れてるし。


 マジでいまにも変な生物にメタモルフォーゼしそう。スマホ構えて待機したくなってきた。


「はよう放してやれ。醜くてかなわぬ。それに、死んだら聞き出せんじゃろうが」


「大丈夫でしょう。これが死んでもまだ何人か残っておりますから」


 セバスチャンさんが、無表情にチラリと視線を流す。


 瀕死の仲間を見ながら硬直している小浮気の人たちが、目に見えてギクリと震えあがった。


「やれやれ、おぬしら聞いたか? 仲間の遺体を見るのが嫌なら正直に話せ」


「あ……あ……」


「一応、前もって言うておくが、この男はやると言ったらやる男じゃからな。そうであろう? 岩よ」


「ええ、もちろんですわ。『有言実行』が、セバスチャンの美点のひとつですの」


「まあ、門川当主の身の安全がかかっておるでな。この場でひとりふたり、死んだところで是非もないわい」
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