神様修行はじめます! 其の五
「さあ、僕の花嫁」

「……」

「さあ、なにをしている? 早く僕の隣に来たまえ」

「お……おうぅ……?」


 困惑してモゴモゴ口籠っているあたしを、門川君がイラついた表情で見ている。


 彼の眉間のシワあたりから、

『うまく僕に調子を合わせたまえ! ……まったく鈍いな、キミは!』

 ってカンジの、遠慮ない心の毒舌が伝わってくる気がした。


 あの山脈みたいに盛り上がった深いシワを見るに、解釈は間違っていないと思う。


 えっと、つまりそれって……


『この場で強引に、正式な婚約をしちゃおうって、言ってるの?』


 そう目で問いかけるあたしに、イライラした顔の門川君がうなづき返してくる。


 彼の思惑を理解した途端、額に汗がドッと噴き出て、ノドが「ひょおっ!?」と変な音をたてた。


 い、いきなりこんな婚約発表とか、聞いてないよおぉぉー!


 つまり、正攻法でダメだったから、奇襲戦法に切り替えたってこと!?


 当主会議の場で発表しちゃって、既成事実を作ってしまおうってことですかい!?


 いや、別に異論はないけど、なにこの不意打ち!?


 事前連絡くらいしてくれてもいいじゃん! 奇襲すぎてこっちまでダメージ食らってるっつの!


 ほんっっとカンベンしてくれ!

 門川君てば相変わらず、他人との意思の疎通が全然なってない!
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