神様修行はじめます! 其の五
「実は、門川当主様と水園様が、庵に戻っておらぬのです」

「……へ?」


 あたしは、つい気の抜けた声を出してしまった。


 ものっそ緊張しまくって、散々引っ張られまくって、大きな衝撃を覚悟して待機してたわりに……。


 出てきた答えが、『庵にいない』? それだけなの?


 なんか、プスーッとヘリウムガスの抜けた風船になっちゃった気分……。


「まだ帰ってきてないだけじゃない? じゃあ宝物庫にいるでしょ?」


「宝物庫を出た報告は届いている。だからもうとっくに庵に着いている時分なのに、いまだお戻りになられぬのだ」


「でも結界張ってるんだから、どこにも行けるわけないじゃん。なら散歩でもしてんでしょ? ストレス解消に」


「ご散策を楽しむような距離や場所ではない。それに……」


「それに?」


「結界の中なのだから、宝物庫と庵の間の、どこかに必ずいるはずだ。なのに、どこにもいらっしゃらぬ」


「……え?」


「だから、どこをどんなに探しても、ふたりが見つからないのだよ」


「………」


 あのー、もしもし?


 えっと、それって、つまり……


 とどのつまり………


「つまり、ふたりが行方不明って、こと?」

「つまり、そういうことなのだ」

「…………」


 あのね……


 それね……


「『戻ってない』って次元の問題じゃないでしょーーー!?」


 信じらんない! なに考えてんのよ!?


 行方不明なんだよ行方不明! ふたり揃って迷子になってるわけでもあるまいし!


 危険じゃないって、めっさめさ危険じゃんかそれ! 絶対、ふたりの身になんかあったんだよ!
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