神様修行はじめます! 其の五
 自慢じゃないけど、運動神経ってあんまり持ち合わせてないんだもん。


 特にバレーボールみたいな、上から落ちてくるのに地面に落としちゃいけないルールとか、理不尽すぎてマジ無理!


 生まれつき反骨精神は強いけど、自然の摂理に関しては素直な性格なんです。


 だから地球の重力に逆らうなんて反逆行為は、苦手なの。


「水園は、『お互い合意の意思で姿を消した』……と言っておったな?」


「うん、あたしもたしかにそう聞いた」


「ならばやはり、異形がらみの面倒の心配はいらぬと考えて良いのかもしれん」


「それにしたって、これだけじゃ情報が少なすぎる! 居場所もなにもわかんないじゃん!」


「ぜんぶお前のせいじゃろが」


「すんません。……ねぇ、水園さんは他に何かしゃべってなかったの?」


 あたしは小浮気の人たちに、順繰りに確認した。


 この人たちはメッセージを全部聞いてるんだから、なにかのヒントを見つけてるかもしれない。


 でもみんな、フルフルと首を横に振るばかり。


「いや、ただ、『しばらくの間、永久様とふたりきりで過ごしたい』とだけしか」


「どうか探さないでくれ、どうか自分たちの邪魔をしないでくれ、と繰り返していた」


「私たちはこうするしか方法がなかった。どうか許してほしい、とも言っていた」


 …………。


 なに、それ?


 話を聞いているうちに、あたしの胸をモヤモヤした重っ苦しい黒い影が覆っていく。


 ドロッとした粘膜に心臓を撫でられたみたいな、すごい嫌な感じがして、不快になった。


 なんか……さぁ。その言いぐさってさぁ……。アレみたいじゃん?


 まるでさ……


「か、駆け落ち、みたいじゃんねぇ?」
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