神様修行はじめます! 其の五
「こりゃ、しっかりせんか小娘。右手と右足が一緒に出ておるぞ?」


 あたしが動揺している姿がよっぽどおかしいのか、ププッと笑いを噛み殺している絹糸が恨めしい。


 周りに聞こえない様に、小声で文句を吐き出してやった。


「なにさ薄情者! 他人事だと思って!」


「がっつり他人事じゃわい。我は永久と婚約発表する気など、ないのでな」


「あ、あたしだってついさっきまで、そんな予定はなかったんだもん~!」


「これくらいのことで動揺するでない。数多の戦いを経て、もちっと肝が据わったかと思うておったが、やれやれじゃ」


 いやいや、それとこれとは別だから! 別次元だから!


 異形のモノとの戦いと、自分の婚約発表では、まったくステージ違うから!


 あえて言うなら、全校集会のステージで、いきなり交際宣言かまされて、壇上に引っ張り上げられるようなモンなの!


 どんな羞恥プレイよこれ! 心の準備も防衛手段も、何も用意してないってのに!
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