・TimeLetter『DEAR』
瑞穂ちゃんは明るくて活発な女の子だったから、当時も男子からも人気があったけど。
誰とも付き合わなかったのは、葉山君に片思いしていたからだと分かったし。
だからと言って、瑞穂ちゃんに振られた男子が私に声を掛けて来た事など無い。
そりゃ、同じ班だとか委員会だとかで一緒になれば、それなりに会話は交わしたけれど。
瑞穂ちゃんと私の仲が拗れたことを気にする様な関係じゃなかった。
二人の仲が自分のせいかもと考える人物が居るとしたら、瑞穂ちゃんに告白され私を好きだと言った(らしい)葉山君じゃないだろうか。
けれど、このことを確かめたくても私には、なす術がない。
葉山君の居所も、葉山君が仲良くしていた友達もよく分からないのだ。
瑞穂ちゃんの話では、葉山君が横浜の大学に進学したって言ってたけど。
今はもう社会人になっているのだから、横浜に住んでいる可能性も低い。
となれば、やっぱり葉山君の実家に聞いてみるしかない?
いやいや!
私ごときが、そんなことまでしていいのか?
なにを考えても、結果は同じで行き詰ってしまう。
「どうしたらいいの?」
テーブルの上で瑞穂から預かってしまった葉山君の学ランのボタンを、コロコロと転がしているうちに。
私は、またしても悪い事を考えてしまったのだ。