・TimeLetter『DEAR』
バッグから取り出し桜色の封筒と便箋を広げる。
カフェラテの入ったカップを少し左にずらし、ペンのキャップを外した。
ペン先を便箋の上に下ろすと、不思議なくらいペンが走る。
タイムレターの返事を出して以来、私のバッグの中に桜色の封筒と便箋を常備していたのだ。
「過去の私」に宛てた手紙を書いた時のように、私は今の想いを記す。
空色の手紙が届いて以来、現在の私が少しずつ変わったこと。
届いた手紙に背中を押され、勇気を出して瑞穂ちゃんに会いに行き仲直り出来たこと。
そして、感謝していることを会って直接伝えたいと。
便箋を折りたたみ、封筒にしまい封を綴じる。
宛先を記入しないまま「葉山浩太様」と宛名のみ記した。
私に届いた空色の手紙と、この桜色の手紙。
並べてみれば、よく分かる。
似た様な風合い、色味使い。
やっぱり、これは卒業記念に男子と女子が色違いで貰った空色と桜色の便箋と封筒なんだ。
「どうして気付かなかったんだろう」と独り言を呟いた時、微かに携帯電話からメールの受信音が聞こえた。
バッグの中から携帯電話を取り出すと、受信ランプがついている。
メールの送り主は、瑞穂ちゃんだった。
私と別れた後に葉山君の友達と連絡を取り、葉山君の所在を教えてもらった瑞穂ちゃんがメールを送って来てくれたのだ。