・TimeLetter『DEAR』
葉山君宛の手紙を手にしている局員さんに、申し訳なさげに訊ねてみる。
「郵便番号が無いとダメですよね」
「えぇ、まぁ」
「……ですよね。すみません、出直します」
やっぱり思い付きで、こんなことするのがいけなかったんだよね。
もっとよく考えて手紙を書くべきだった。
「その手紙、返してください」と手を差し出した私を見ながら、局員さんは手紙を返してくれずに、窓口から少し身を乗り出し私の耳元に顔を近づけると小声で言った。
「そんなアッサリと引き下がんなよ」
「え?」
耳元で囁いた局員さんの顔が離れた瞬間、窓口に立つ彼を見つめた私の顔は火が付いた様に熱くなる。
さっきまでの爽やかな笑顔とは、また少し違った表情で私だけを見つめていたからだ。
眼鏡の奥から真っすぐに私だけを見つめている焦げ茶色の瞳。
短髪だけど、ワックスで少し遊びをつけている髪。
窓口越しでも背が高い事が分かる、私との身長差。
歳は私より少し上……って感じかな。
顔が熱くなっているくせに、やけに目の前の彼を冷静に品定めしている。
というのも、最近の私は同年代の男性から見つめられた記憶が無いから。
妙にじっくりと眺めてしまっていた私の視線が怪しかったのか、彼は苦笑いしながら言ったのだ。
「郵便番号が無くても、郵便物はちゃんと届くよ」