future
―――数時間後
「うーん...こんなもんかなぁ...」
社会人女性の常識であって、しなくてはならない"メイク"...
悲しきかな、私はしたこともメイク道具にも触ったことがない。
そのために今回メイク専門雑誌を買ってきた。
「これで少しはましになればいいけど...」
家を出る前に確認した自分の部屋は、ちゃっかりとメイク道具は揃っていた。
だからあとは自分が学ぶだけだ。
雑誌の他に買ったものというと、晩御飯...まあ、食材である。
家にある冷蔵庫を開けてみると、驚くほど何も無かった。
おそらく、昨日のうちに食べきってしまったのだろう。
今から帰ろうというとき、私のスマホに電話がかかってきた。
それは、月丘くんからであった。
「...もし、もし.....?」
戸惑いつつもおそるおそる電話に出ると、耳元から元気な声が聞こえた。
「よ!元気になったかー?
あっそうそう、冷蔵庫何もなかったろ?何か買ってくか?」
「あ...それなら大丈夫!えっと..体調良くなって外の空気吸うついでに買ってきちゃった」
...嘘はついてないだろう。
「それついでって言わないと思うぞ...?
..ま、なんにせよ元気になって良かったよ!...今どこ?迎えに行く」
優しく呟かれたその声が、電話越しであっても耳元で聞こえてくすぐったい。
――そしてちょっと、きゅんとした。
「ありがと、月...あー違う...よう、へい」
そうだった...未来の私は彼のことを、名前で呼んでいるのだ...。
少し、恥ずかしさも感じながら初めて彼の名前を呼んだ。
「おー、いつものスーパーで大丈夫か?」
いつもの...?
「うん...えっと、NEONのことだよね?」
「ああ、じゃあ今から行くから」
どっか座って待ってろ、と言って通話は切られた。