Seven days【短篇】


 猫を抱えて「頑張れよ」と声をかけながら、家の手前の曲がり角をまがろうとしたとき

 ――ドン!

 こちらへ曲がってくる人物に気付かずぶつかってしまった。

「あ、すみません」

 ぶつかったといっても、肩と肩が軽くぶつかった程度だったから、相手も軽くあたまを横に振り口元に笑みを浮かべただけで、そのまますれ違う。

 日が落ちようとしている薄暗さのせいか、顔はよくみえず、笑った口元しか見えなかったが、その口角の上がり方はどこかで見たような笑い方。俺と同じ制服。

「あれ……?」

 誰か知り合いだったかと思い、すれ違った後振り返ったがもう姿は見えなかった。住宅地のこの辺は曲がり角が多い。俺がついさっき通り過ぎたばかりの曲がり道にでも行ってしまったのだろう。

 まあ、いいかと。今は猫の手当てが先だと家へと急ぐ。

 案の定母親は苦い顔をしたが

「ちゃんと自分で面倒見るから」

 というと、小言を言いながらも救急キットを貸してくれた。

 部屋へ連れて行き、手際よく母親が持ってきてくれた蒸らしたタオルで拭いてやり、傷口を消毒して包帯を巻いてやる。

 片足は返り血だったらしく怪我をしていたのは後ろの左足だけで、足先をかすめただけですんだらしく骨折してる風でもない。

 猫はおとなしくしててくれたから、すぐに手当ては終り。皿に注いだミルクも全部飲み干した。

 コレなら回復も早そうだ。

 一安心。自分も食事と風呂を済ませて眠りについた。



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