私の最後の愛

そんな事を思ってる間にも服は脱がされ上半身はなにも纏っていなかった。
もうだめだと思って目をギュッと閉じると、微かにバイクの爆音が聞こえた。
(そう言えば、前に龍が説明してくれた。本家には多田組がいて多田はバイクを中心とするって。)

考えている内にバイクの音は近付いてくる。
倉庫の中は騒がしくなって、外へ出ていく組員もいる。

バイクの音が消えた代わりに男の人たちの声が聞こえてきた。
倉庫のシャッターが開いて沢山の人が入ってきた。
私の上に跨っていた陣も舌打ちをして退いた。

私はどうすることもできずにいると上から羽織がかけられる。
「アンタが龍坊の嬢ちゃんか。もうすぐ龍坊がくるで安心しな。俺は多田組の会長、氷希や。」
氷希さんは私を起してくれて壁に凭れさせてくれる。

「......ありがとう、ござ、ぃます。」
途切れながらも礼を言うと「あんま喋らんとき。」
そう言って私を守るように前に立ってくれた。
< 56 / 155 >

この作品をシェア

pagetop