不思議に不思議な彼女と僕
綺麗に塗られた白い壁に、完璧に塗装された赤い屋根を見ていると、同じ色だけれど見た目は似ても似つかないどこかのボロ屋を思い出す。
もしも今ここに彼女がいたら“失礼な事を考えていそうな顔をしている”なんて言いながら、すかさず手が出ていたことだろう。
そんなことを考えながら、駅に向かって歩いていく。
大通りは避けて、近道となる裏通りばかりを選んで歩くと、やがて入り組んだ住宅街に入る。
そこから急に道幅が狭くなると、車がすれ違うのもやっとなその通りには、途端に徒歩と自転車の数が多くなる。
そんな場所にポツンと佇むその店は、今日も誰にも見向きもされずにそこにあった。
手作り感溢れる雑な白塗りの壁に、所々塗装が禿げかかって錆び付いて赤茶けた屋根。
敷地と道路のギリギリのラインには古びた筒型のポストが置かれていて、その投函口を隠すように “open”と黒いペンキで手書きされた木の板がかけられている。
文字は雨風に晒されてだいぶ色あせ、木の板もすっかり黒ずんでしまって、よく近づいて見なければ文字なんて読めない。