不思議に不思議な彼女と僕
入口はすりガラスがはめ込まれた引き戸になっていて、これがまた立て付けが悪くて中々開かない。
まるで来訪者を拒んでいるようなそのドアを、外してしまいそうな勢いで無理やりこじ開けると、その物凄い音がドアベル代わりとなって、どこからともなくこの店の店主が顔を出す。
便箋と封筒が大量に置いてある、不思議な店の不思議な店主。
わかっているのは性別だけ、名前も年齢も何を聞いても “秘密です”と言って笑う、不思議な人。
何度来ても始まりは同じ、その店は朗らかな笑顔と“いらっしゃいませ”の代わりにこの言葉で迎えられる。
「気持ちを伝えるお手伝い致します。あなた好みの便箋を、もしくはお相手好みの封筒を選んで、気持ちを伝えてみませんか?あなたの胸に秘めた想いが、大切な相手に届きますように……」
これは、不思議な店の不思議な店主と出会った、僕の物語――。