不思議に不思議な彼女と僕


「きみって、時々いじわるだよね」


そんな楽しそうなじゃれ合いが、ひしひしと伝わってくる親密な空気感が、心をスーっと冷やしていく。

なぜだかすぐ目の前にいるはずの二人が、とても遠くにいるように感じた。

追い討ちをかけるように、彼女から漂ってくる幸せをまとった甘い香りが、どうしようもなく胸を締め付ける。


「お、お誕生日……おめでとう、ございます」


手にしていた合格通知を背後に隠して、何とか笑顔を浮かべて口を動かす。

黙って立っているよりも、その方が幾分、その場の空気に紛れられるような気がしたから。

だから、本当に言いたかったセリフは胸の奥にしまいこんで厳重に鍵をかけ、二人の前では表情筋に力を込めて笑ってみせる。

その時、知らないうちに同じように力を入れてしまっていた手の中で、合格通知がクシャっともろく歪んだ。


「ありがとう」


眼鏡の奥の目を細めて、男性が照れたように、でも嬉しそうに笑う。

その後ろで、彼女もまた幸せそうに笑っている。

その笑顔に、溢れる幸せそうな雰囲気に、二人の同じ指で輝くプラチナの輝きに、張り裂けそうな程に胸が痛んで、どうしようもないくらい悲しくなった。

それなのに、家に帰って一人になってからもそれ以降も、なぜだか涙は、一滴も出てこなかった――。






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