不思議に不思議な彼女と僕
まあ、暇さえあればこうして通ってくるくせに、いつまで経っても何も買わない奴は、お客ではなくただの冷やかしだと認識して、態度を改めたのかもしれないけれど。
そんな風に気安い感じで来られると、ふとした拍子に懐かしい姿と重なって、その度に古傷が疼くように胸の奥が痛む。
それを誤魔化すように、叩かれた頭をさすりながら唇を尖らせていると、彼女が店の奥からハタキではなく別のものを手にして歩いてきた。
わざわざ見せつけるようにして持ってくるのは、冷やかしに対する囁かな営業努力だろうか。
ちっとも響かないけれど。
優勝トロフィーを持って歩く人のように店の奥からやって来た彼女は、そのまま一番近くの棚の間に消えていく。
一瞬チラッと視線を送ったのは、自分の営業努力の成果を確かめるためだろうか。
これっぽっちも響かないけれど。
それでもまあ見るだけはタダなので、あとを追うように奥まで進んで、彼女が消えた棚の間に立つ。
ちょうど真ん中辺りにしゃがみこんでいた彼女は、スカートの裾が床にくっついていることもお構いなしに、持っていた商品を棚に並べていた。