不思議に不思議な彼女と僕
なんだか面倒くさいので、特に突っ込みも同意もせず、黙って封筒を眺める。
「元々ここにはですね、地は青のグラデーションで、白い雪の結晶が描いてある便箋があったんです」
聞いてもいないのに、彼女が懐かしそうに楽しそうに語りだす。
「嘘言わないでください。元々ここにあったのは、波乗りしてるサーファーの絵が描いてある便箋です」
「あなたこそ、適当な事言わないでください」
彼女はこの店を埋め尽くす大量の便箋と封筒を、買われていった分も含めて全て把握しているらしい。
この上なく胡散臭いセリフの真意を確かめるように、時々こうしてカマをかけるようにデタラメを言うと、微塵も動じることなく怒られる。
彼女が覚えているのは商品の種類だけでなく、それはどんな人が持ってきたものなのかにまで及ぶらしい。
これはカマのかけようがないので確かめたことはないが、彼女は自信満々にそう語る。
この店に置いてある商品がひどくチグハグなのは、その全てが誰かが使っていたものの余りだから。
どうしてそんなものを集めて、こうして売り物にしているのか、それは聞いても教えてはもらえない。
ただいたずらっ子のように笑って“秘密です”と言われるだけ。