君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは流人がシャワーから出てくるのを待っていた。
流人を待っている長い時間に、きゆは気を紛らわすために夕食も作った。
流人はきっとお腹を空かせて帰って来るだろうと思い、病院の小さな台所で、わずかしかないお米と冷蔵庫に入っている卵とソーセージで、塩おにぎりと卵焼きにソーセージを炒め、お皿に並べて準備していた。
まだ、停電が続いているため、院長室にろうそくを二本立てた。
柔らかいほのかな灯りは、張り詰めてクタクタになったきゆの心を癒してくれる。
流人は病院のシャワールームから洗いざらしの髪に短パン一枚という格好で出てくると、院長室の応接台に並んでいる食べ物を目にして口笛を鳴らした。
「きゆ~~~、もう、きゆは本当に最高だよ。
実は光浦のおばあちゃんをセンターまで届けた時に、役場の人から、中に食事を用意してあるから食べていってって言われたんだけど、きゆがここで待ってるって思って断って急いでここに来たんだ。
きゆの顔を見てホッとしたら、急激に腹が減ってきた」
流人は応接台の前に座っているきゆの隣に腰かけた。
ろうそくの灯りに照らし出されるきゆの顔をジッと見る。
「きゆ、なんか、どうしたの?
10歳くらい老けたみたいな顔になってるけど」