君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
みぞれの頃
「俺の帰る場所はここだから…」
「流人先生、この毛布も持って行ってね~~~」
きゆの母親の麻沙子は、最近、きゆが家に連れてくる田中医院の流人先生の世話を焼くことが生きがいになっていた。
本当の事を言えば、麻沙子は、きゆの元恋人が流人だという事を、流人がこの島に来た時から知っていた。
きゆから詳しく聞いたわけではない。
でも、きゆが突然この島に帰ってきた時に、麻沙子は理由を問いただした。
理由を聞かなければ、この小さな何もない島にきゆの居場所はないのではないかと思ったから。
きゆは一言、恋人と別れたと言った。
毎日泣いてばかりいるきゆに、麻沙子は何も言わず、美味しい食事を作り、普段と何も変わらない島の生活をあえて続けた。すると、4月に東京から新しい若い男の先生が田中医院に赴任するという話を聞き、その先生の勤めている病院を聞いて、麻沙子はすぐに確信した。
きゆの彼氏がやってくると…
秋も深まる11月が終わる頃、ある日、突然、きゆが流人を連れてきた。
口数少ないきゆからは何も聞けなかったが、代わりに流人がたくさん話してくれた。
「この小さな島では噂が広まるのは早いと聞いたもので、変にご両親の耳に入るより、僕の方からちゃんと話しておこうと思って…
あの、僕ときゆさんは、真面目におつき合いをしています。
よろしくお願いいたします」