君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



麻沙子もきゆの父親の恭一も、最初はお医者様ということもあり、かしこまり正座をして流人の話を聞いた。
特に、恭一は、島の有名人の流人の訪問に驚きを隠せなかった。


「きゆさんとは、結婚を前提におつき合いしています。
だから、こうやって、ちょこちょこ、ここに遊びに来ていいですか?」


凛々しい顔をしているのに笑うと少年のようになる流人に、麻沙子も恭一も反対する理由が見つからなかった。それより、こんな田舎者の娘でいいのだろうかと、愛するきゆを思えばこその心配がよぎった。

こんな立派な先生ときゆは本当に結婚できるのだろうか…



麻沙子は、夕食を済ませ帰ろうとしている流人に、大きな紙袋を持たせた。


「あ、ありがとうございます」



「病院は冷えるでしょ?
院長室のエアコンは壊れてるってきゆから聞いて、毛布が一枚あるのとないのとでは全然違うから」


田中医院の院長先生は、結局年明けからの復帰となっていた。
まだ、東京に住む娘夫婦の家でゆっくり休養を取っている。


「確かに…
じゃ、ソファに敷いてもいいですか?
あそこが一番寒くて…」



「うん、どこに使ってもいいから。
とにかく、風邪を引かないように、ね?」



< 107 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop