君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは帰りの車の中で、小さくため息をついた。
「どうした? そんな深いため息をついて」
きゆは毛布が入った紙袋を指さして流人を見た。
「うちのお母さんもお父さんも、流ちゃんへのお節介がひどすぎない?
だって、昨日は、電気ストーブを持たされたのに、今日は毛布でしょ。
自分の親ながら笑っちゃうよ…」
「いいじゃん、娘を愛してる証拠だよ」
「だから、切なくなるの…
必死に藁にでもすがる感が強すぎて。
きっと、流ちゃんとの結婚だって全く信じていないと思う。
そう思うのもしょうがないけどね…」
流人は車を病院の駐車場に停め、でもエンジンは切らずに助手席に座るきゆを見た。
「実は、12月に入ったらすぐに東京に一週間ほど帰らなきゃならないんだ。
でも、10日のきゆの誕生日にはちゃんと帰ってくるから、それは心配しなくても大丈夫。
毎年、参加してる学会に出るのと、それと…
それと、親父とおふくろに、俺ときゆの事をちゃんと話してこようと思ってる」
きゆは言葉に詰まっていた。
自分の中で克服できたと思っていたトラウマが、また鮮明に蘇ってくる。
ううん、今年は違う…
今年は、流人と二人でこの島で私の誕生日を迎えられる…
ちゃんと、誕生日には、私の元へ帰って来てくれる…