君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「きゆ…
大丈夫だから。ちゃんと帰ってくる。
ってか、今の俺の帰る場所はここだろ?
出張に行って違う所に帰る方がおかしな話だし。
だから、不安になんてならなくていいから」
きゆは小刻みに震える手を必死にもう一つの手で押さえ込む。
流人の言うように、不安になる方がおかしいし、今年は去年とは違うのも分かっている。
「きゆに誕生日プレゼント買ってくるよ。
何がいい?
バラの花は4月にプレゼントしたし、また、東京から連れて来る自信もないし、何か欲しい物が
あったら言って」
きゆは首を横に振り、何度も深呼吸をする。
「きゆ? 大丈夫か?」
きゆは抑えきれず流人の首元に抱きついた。
「流ちゃん、その学会って行かなきゃダメなの?
もし、プレゼントをねだっていいって言うのなら、東京に…行かないでほしい…
なんだか、また、流ちゃんが私の元からいなくなりそうで怖いの。
東京から帰って来れなくなるんじゃないかって…
また、去年と同じ12月に…」
流人の首元に抱きつくきゆは全身が震えている。
流人は、そんなきゆを強く抱き寄せ、優しくきゆの背中をさすった。
「もう、考え過ぎだって…
俺の帰る場所はここしかないんだから。
だから、きゆはどっしりと構えてればいいんだよ」