君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人は、去年のあの12月の出来事を蒸し返したくはなかったし、きゆの不安な心に追い打ちをかけるような真似はしたくはなかった。
でも、きゆの様子は胸が苦しくなるほど痛々しい。
どんな状況であれ、きゆの心に傷をつけてしまったのは俺だ。
傷つけた行為を悔やむより、癒していく方法を二人で見つけなければならない。
「きゆ、でも、俺は、やっぱり東京行きは止めない。
きゆが泣いて頼んでも、俺は、自分の用事を済ませに東京に帰る。
なんでだと思う?
それは、俺自身にとって、何も特別な事じゃないからだよ。
きゆの元へ帰る事は自然な事で当たり前の事。
それはこの地球がひっくり返っても変わらない。
だって、俺達は結婚するんだぞ、分かってる?」
きゆは流人にしがみついていた体を元に戻した。
流人の目を見て大きく頷くのが精一杯だった。
「ごめんね…
こんなに取り乱しちゃって…
そうだよね、私達は結婚するんだもの。
流ちゃんを信じて待つことなんてどうってことないはずだよね。
…うん、分かった。
私は誕生日を楽しみに待ってるから。
気をつけて行ってきて」
流人は無理に微笑むきゆに優しくキスをした。