君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆが仕事を済ませ建物の外に出てみると、やはり、今度は外のベンチに瑛太は座っていた。
もう12月に入り、外の風はかなり冷たいというのに。
「瑛太、どうしたの?
中で待ってればいいじゃない?」
大きな体を面倒臭そうに動かし、瑛太はよいしょと立ち上がった。
「もうお昼の時間だろ?
ちょっと、俺につき合ってよ」
瑛太は買い物袋をきゆに手渡すと、自分の車に乗り込みきゆを呼んだ。
「すぐそこの公園までつき合って。
天気が悪いからあんまり最高の景色は期待できないけど」
老健施設のほぼ隣にある芝生で整えられた小さな公園は、天気がいい日は真っ青な海が見渡せる。
でも、どんよりとした曇りの天気では、寒さのあまり車の外に出る気にもならなかった。
「きゆ、俺には本当の事を教えてほしい」
車の座席に座ったまま、瑛太は近くに見える公園のどこかだけを見つめている。
きゆは何となく予想がついた。
瑛太がきゆに何を聞こうとしているのか…
「お腹空いた~
瑛太が買ってきてくれたおにぎり食べていい?」
きゆは瑛太が話した言葉をさりげなく流そうと、話題を変えた。
「きゆ、あいつとつき合ってるのか?」
瑛太はまだ一点を見つめている。
でも、その横顔は、いつもの穏やかで優しい瑛太の顔ではなかった。