君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは大きく頷き、瑛太の顔を見る。
物心ついた時から瑛太はきゆの一番の友達だった。いつも寛大で、怒った顔など一度も見たことがない。
でも、今の瑛太の顔は、奥歯を噛みしめ険しい大人の男の顔だった。
「なんかさ…
色んな噂が耳に入ってくるんだ…
きゆとあいつは東京にいる時からつき合ってたとか、きゆはあいつにフラれてこの島に帰ってきて、あいつはそんなきゆを追ってこの島にやって来たとか」
きゆは今度は小さく頷いた。
「うん、そう、そのまんまだよ…
もう、そんなに噂になってるんだ…
噂じゃないか… 本当の話だから」
瑛太は切なそうにつぶやくきゆを見て、更にしかめた顔をした。
「全然、嬉しそうじゃないじゃん。
不安でたまらないって顔をしてる。
何があってあいつにフラれてここに帰ってきたのかは知らないけど、その問題はクリアできたのか?
きゆを追ってここまで来てくれた、それだけで女の人は心が揺さぶられるし、勢いでよりを戻すパターンだよな?
でも、俺は、あいつときゆが結ばれるとは到底思えない。
あいつって大病院の息子で次期院長なんだろ?
そんな簡単なもんなのか??
そうじゃないから、それをちゃんと分かってるから、きゆはこの島に帰ってきた。そうだろ?」