君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「そのスーツケースを開けてみて」
明日には流人が帰って来るというのに、今日は朝から激しい雨が降っている。
きゆは天気予報を見ながら、携帯でフェリーの運航状況を確かめた。
島に住む者にとっての一番の不便は、天気に左右されることだった。
飛行機はもちろんのこと、フェリーもすぐに欠航になる。食料、生活品の停滞はまだ我慢できても、人の往来が途絶えることは本当に不自由だった。
昼になると雨に伴い風もかなり強く吹いていた。
昨日の夜に出たフェリーは無事に朝には港に着いていたが、問題は今夜に出発するフェリーだった。今の時点で調整中が出ている。
きゆは流人にその旨を伝えるため何度も連絡を取っているが、忙しいのか、流人からの返信は中々来なかった。
それから夜になるまで流人と連絡は取れず、結局、流人がフェリー乗り場に着いた時点でやっと連絡がついた。
「きゆ、フェリー、欠航だった」
「うん、知ってる…
それを伝えたくて、今日ずっと連絡したのに、流ちゃんから全然返事がこないんだもん」
「ごめん…
明日は大丈夫かな…
もし、明日も欠航の時は飛行機で帰ってくるよ」
「飛行機だよ?大丈夫??
明日は相当天気が悪いから、すごく揺れるかもしれないよ」
「でも、明日帰らないと、きゆの誕生日に間に合わないだろ。
もし、飛行機でしか帰れなくて俺が気絶してたら、その時は優しく介抱してよ」