君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
結局、流人は翌日のフェリーに乗る事ができ、きゆの誕生日の当日の朝、この島へ帰ってきた。
急激に天気が回復したわけではなかったので、フェリーはかなり揺れたはずだ。
きゆは、流人の疲れ果てた顔を見て気の毒に思った。
フェリーから降りてくる流人は、行く時よりかなり荷物が増えている。
特にきゆの目を引いたのが、またあの時のようなスーツケースをコロコロ転がしていることだった。
「流ちゃん、なんか荷物増えてない?」
車の荷台に流人の荷物を載せながら、きゆはそう聞いた。
「そりゃ、もちろんでしょ。
きゆの誕生日にクリスマスに、サンタさんは忙しいんです」
きゆはクスッと笑い、このスーツケースの中身が何なのか想像するだけで楽しかった。
「あ、そういえば、老健施設の人から連絡があって、流人先生に、クリスマスイブの日のお昼にお願いしたい事があるって言ってた」
流人は助手席に乗り込むと、まだ船に揺られているようなそんな船酔い状態だった。
「で、何の用事だった?」
「なんかね…
どうやら、サンタクロースになってほしいみたいな感じ」
12月の俺って本当に忙しい……
サンタになって、歌を歌えって言うんだろ?
何でもやります… 頑張ります…
だから、今は少し眠らせて…