君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人が留守にしている間、大きなケガや病気で病院を訪れる患者はほとんどいなかったが、でも、腰が痛かったり肩がこり過ぎてたりする患者達は、今日の午後からの診療に予約を入れていた。
「流ちゃん、今日の午後は、結構、患者さん多い思う。具合は? 大丈夫?」
流人は昼食も取らずにギリギリまで寝ていた。
昨夜から今朝にかけて、あんなユラユラ揺れる船の中では一睡もできていなかったから。
「…うん、大丈夫だと思う。
でも、島の人達って本当にたいへんだよな…
皆、船酔いとかしないんだろ?」
きゆはしかめっ面で流人を見た。
「皆、しけの日には船には乗らないし、最近はほとんどの人が飛行機を使ってる。
逆に島の人達は、船に乗る流ちゃんに驚いてるよ」
流人は気の抜けた疲れた顔をしてうなだれた。
「でも、俺は、飛行機も苦手だしな…
この島に住むんだったら、俺は一生ここから出たくないし、出ないことにする」
「流ちゃんがこの島にずっと住むことはないから、大丈夫だよ」
流人は何も言わず、机の上に載っているカルテに目を通し出した。
急に話を遮る流人の行動がこの時どういう意味を含んでいたのか、きゆは、全く知る由もなかった。