君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆの予想通り、午後からの診察は人で溢れ返った。具合が悪い人、ケガをした人、流人と話がしたい人、患者は様々だ。
そして、一つ言える事は、流人はこの島の立派な町医者になっているということだ。
流人の気さくで人懐っこい性格は、閉鎖的な島の人々の懐にいつの間にか入り込んだ。
懐に入り込まれたからには島の人々は、情深く確実に流人を愛してくれる。それは、流人の魅力であり、隠れた才能でもあった。
「は~~、疲れたね… 流ちゃん、お疲れ様」
きゆは最後の患者の会計を済ませ丁寧に玄関まで見送った後、流人に温かいココアを入れた。
「あ~、もう7時か…
今から、きゆの誕生パーティをしなきゃならないのに」
きゆはその言葉だけで嬉しかった。
「そんなかしこまらなくてもいいよ。
私にとって、流ちゃんが今日ここに居てくれるだけで嬉しいんだから」
流人はフッと鼻で笑ったが、内心は心が締め付けられるほど感動していた。
「きゆ、どこでしようか?
俺のあの山奥の家か、この狭い病院か」
「ここでいいよ…
実はお昼にうちの母が、なんか気を遣って、ご馳走を作ってここに持ってきてくれたの。
有り難いけど、なんだか母の必死さが痛々しくて」