君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆがそう言った後、流人がさりげなく目を伏せたのが分かった。
そして、ココアを手に持ったまま窓の方へ歩いて行く。
「外はみぞれが降ってるし、ここでしようっか。
きゆのお母さんの手料理が食べれるのは本当に有り難くて嬉しいよ。
大事にしような…
きゆのお父さんとお母さんの事…」
「…うん、ありがとう」
きゆは何かが引っかかったが、でも、その時は素直に喜んだ。
院長室の小さな応接台は、きゆの母の手作りのご馳走と島唯一のパン屋で作ってもらったバースデーケーキでぎゅうぎゅう詰めだ。今日は二人ともアルコールは取らないと決め、コーラで乾杯した。
「きゆ、お誕生日おめでとう。
何歳になったんだっけ??」
きゆはわざとらしく聞いてくる流人をわざと睨みつけた。
「言いたくない」
「27歳のお誕生日おめでとう、きゆ」
流人はきゆを呼んで自分の膝の上に座らせた。
「見た感じは18歳にしか見えないけどな…」
「もう」
きゆが流人のほっぺを軽くつねると、流人はきゆの左頬のえくぼにキスをする。
「きゆ、あのスーツケースを開けてみて」
「また??」
きゆは驚いた顔で流人を見た。
また同じシチュエーションに開ける前から可笑しくてたまらない。