君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
院長室の入口にわざとらしくそのスーツケースは置いてあった。
きゆは流人の顔をチラチラ見ながら前回と同じ表情を浮かべ、でも、前回のようなロマンチックな気分ではなくビックリ箱を開けるような可笑しさがつきまとう。
「また、バラの花がきっしり入ってる?」
流人はさあねと言ってとぼけた顔をした。
「え~~何だろう??」
きゆは恐る恐るそのスーツケースのファスナーを開けると、本当にビックリ箱のように何か白いフワフワしたものが飛び出してきた。
「何だろう?…」
「出して広げてみて」
きゆはその滑らかな手触りのレースのようなサテンのような美しい生地の大きな固まりを広げて、自分の目の高さまで持ち上げた。
「……流ちゃん、これ」
きゆは目の前に広がる真っ白なウェディングドレスに釘付けだった。
あまりの美しさにただ見惚れて言葉なんか出てこない。
流人はそんなきゆからドレスを取り上げ、きゆの体に合わせてみた。
「めっちゃ似合ってる…
サイズも多分大丈夫だと思う。
ドレス屋のお姉さんにきゆの写真をたくさん見せたら、絶対これがいいって、皆で太鼓判を押してくれたんだ」
きゆはもう一度そのドレスを手に取ると、院長室にある小さな鏡にその姿を映した。