君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「……流ちゃん、ありがとう…
こんなに素敵なウェディングドレス、見たことがないよ…」


きゆは大粒の涙が溢れて、鏡に映る自分がよく見えない。
でも、幸せそうな顔をしてその鏡を覗きこむ、流人の顔はちゃんと見えた。
きゆは大切にそのドレスをハンガーにかけると、倒れ込むように流人に抱きついた。

瑛太にあんな事を言われた後、気にしないよう心掛けていたが、きゆの心に小さな不安がつきまとった。
でも、違う…
流人は絶対に嘘はつかない…
きゆの今の心の中は、安堵感と流人を愛する想いで溢れている。


「まだ、終わりじゃないぞ」



「え?」



「もう一回、ちゃんとスーツケースを見てみ」


きゆは涙を拭ってもう一度スーツケースの中を覗いてみる。


「何もないよ」



「あるって、よく見てみて」


きゆはもう一度スーツケースを隈なく見た。


「あ……」


スーツケースの底の平面に、小さな何かがガムテープで貼り付けてある。
それも頑丈に…
きゆは丁寧に優しくそのガムテープを剥がすが、べったりくっついているガムテープは中々剝がれない。


「流ちゃん、こんなに強くガムテープ貼っちゃダメだよ、剥がれないじゃん」




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