君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
二人はウェディングドレスと指輪を眺めながら、きゆの母が作ってくれたご馳走を食べた。
流人はきゆの母親の鶏の唐揚げが一番の好物だ。大きな口を開けパクパクと鶏の唐揚げをほおばる流人を見て、きゆは一枚写真を撮った。
「お母さんに送っていい? きっと喜ぶから」
きゆがスマホを向けると、流人はもう一つから揚げを箸に持ちニッと笑った。
東京で美容室へ行ってきた流人は、またいいところのお坊ちゃまの雰囲気が戻ってきている。
きゆは、今の流人を早く母に見せてあげたくて、何枚も写真を撮った。
「なんか、外は吹雪いてる感じ?」
流人は窓の方を見てきゆにそう聞いた。
「ううん、雪は降ってないよ、雨混じりのみぞれが降ってるだけ。
この島にはあまり雪は降らないの、残念だけど…」
きゆは窓の方へ行き、外を確かめて残念そうに肩をすくめた。
その後に続いて流人も窓の近くへ来る。
「私の名前、何できゆか分かる?」
流人は後ろからきゆを抱きしめ、首を振った。
「27年前の今日は天気予報で雪予報が出てたの。父と母は雪の降る日に娘が生まれるかもって喜んでたら、雪じゃなくみぞれだった。
本当はゆきって名前にする予定だったけど、みぞれだったから、ひっくり返ってきゆになったって笑って言ってた」