君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人はケーキにろうそくを7本立て、ライターで火をつける。
きゆが暗い顔になっているのは分かっていた。
でも、流人は、普段と変わらない明るい笑顔でバースデイソングを歌い始める。
きゆの不安を心に感じながら…
「きゆ、お誕生日おめでとう!」
ぼうっと座っているきゆに、流人はジェスチャーで消してと伝えた。
きゆはこちらまで悲しくなるような笑みを浮かべて、力なく息を吹きかける。でも、何度吹いても最後の一本が消えない。
すると、流人も一緒に息を吹きかけ、めでたく7本のろうそくは全て消えた。
それでも、きゆの表情は、流人の胸を締め付けた。ウェディングドレスをプレゼントしても指輪を贈っても、親の承諾をもらったという報告には何を並べても敵わない。
流人もそのきゆの切実な願いを、誰よりも分かっていたし、誰よりも手に入れたかった。
「きゆ…
よく、聞いて……
今の俺達の状態は、さっきのろうそくと一緒なんだ。
6本までは簡単に消せたけど、最後の1本が中々消せない。
でも、二人で消したら簡単に消せただろ。
いつかは、親父達も分かってくれる。
残った最後の1本も必ず消える、だって、ろうそくは蠟がなくなったら絶対消えるんだから…
それと同じだよ。
親父達は絶対分かってくれる…
きゆは何も心配しなくていいから」