君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



きゆは封筒に入った資料を握りしめ、車に戻った。
高鳴る心臓に戸惑いながら、封筒に入っている資料を取り出す。

きゆはあまりの驚きでその紙を落としてしまった。


………嘘でしょ? あり得ない。


車の窓から外を見ると、もう港の桟橋に船が着いている。
放心状態のきゆは、とりあえず外へ出て、桟橋の方へ向かった。


………何かの間違いでしょ? 何かの間違いであってほしい。


でも、それは現実だった。
村の人達が高く掲げる横断幕には流人の名前が書かれている。


“池山流人先生、この島へようこそ”




船から乗客が続々と降り出す。
きゆは自分が今どんな顔をしてその乗客達を見ているのか、全く分からなかった。
それくらい、きゆにとってこの現実はあまりにも突然過ぎた。


きゆが船の方を見ていると、奴が階段の上に立っているのが分かった。
自分を歓迎してくれている村の人達を見て、目を丸くして驚いている。

そして、すぐに人懐っこい笑顔を浮かべ、品のいいチャラ男になって手を振り出した。


………流人のバカ、何しにここに来たのよ。



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