君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
イブの日は午前中が施設の訪問診療の日だったため、流人ときゆは、そのまま、昼食を兼ねたクリスマス会に参加した。
流人はこの施設でもとにかく人気者だ。
患者さんのみならずスタッフの人達も含め全員が、流人の事を大好きだった。
流人はいつもの軽い感じで医者という雰囲気を一切消して、まるで、おじいちゃんやおばあちゃんに甘える孫のようにお年寄り達を喜ばせ楽しませた。
「流人先生」
スタッフの人が流人を呼びに来ると、その場にいるおばあちゃん達がスタッフを睨みつける。
「あの、皆さん、流人先生はこの後仕事が入ってるので、これでお帰りになるそうです」
流人は名残惜しそうなふりをして、皆に挨拶をしてその場から出て行った。
流人は、施設の一番奥にある物置のような場所に連れて行かれ、そこにハンガーで吊るされているサンタの衣装を見て、悲しいかな血が騒ぎ出した。
俺って、こういうの好きなのかもしれない…
スタッフの人から一通りの段取りを聞き、流人はサンタの格好をして待機した。
携帯で披露する歌の動画を何度も観ては口ずさみながら。
「では、流人先生、お願いします。
ばれたらばれたで全然大丈夫ですので、好きなようにやって下さいね」