君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



そして、プレゼントを渡し終わった流人は、その会場の真ん中に立った。


「皆さんへ、僕から愛をこめて…
あ、もう、取っちゃっていいですか?」


流人はそう言って勝手に髭と帽子を取った。


「なんか、この髭がめっちゃかゆくて、すみません…」


会場では突然現れた流人に歓声が上がり、泣いて喜ぶおばあちゃんもいた。


「あの、本当は僕達からも皆様にプレゼントをと思っていたのですが、あ、さっきのプレゼントは施設のスタッフからのものです。

何も準備していなくて、で、今の僕にできることは、夏のカラオケ大会優勝者としてこの場で歌う事かなと思いつきました」


会場にいる全員が、大きな拍手を流人へ送った。


「僕の人生の中で、この島で過ごす一年はたったの一年なのかもしれないけど、こうやって色々な経験ができ、島の人々の温かさに触れ、東京生まれ東京育ちの僕には、かけがえのない一年になっています。

これからもどうぞ田中医院をよろしくお願いしますね」


いつものクシャとした笑顔を浮かべ、流人は深々とお辞儀をした。
すると、あの歌のイントロが流れ出した。

“上を向いて歩こう”

スタッフの人達が選んだ歌だ。



< 132 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop