君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
軽快なイントロにお年寄り達の体が揺れ動く。
流人の歌声はこの歌にピッタリだった。
きゆも隣に座るおばあちゃんと体を揺らして一緒に聞いた。
切ないメロディだけど前向きな歌詞は、今のきゆに力を与えてくれる。
きゆは以前聞いた89歳のおばあちゃんの話を、漠然と思い出していた。
“89年生きてきた中で、本当に愛した人はたった一人だけなの…”
きっと、私も、流人の他にはもう誰も愛せない…
きゆは流人の何も考えずに俺についてこいといういつもの俺様的な考えに、何も言わずについていくことが二人にとって進む道なのかもしれないと、少しだけそう思った。
その日の夜は、きゆと流人はきゆの実家で夕食を取り、その後、流人の自宅へ向かった。
久しぶりにこの家へ入った二人は、リビングに飾れているクリスマスツリーに驚いてしまった。
「なんかすごい豪華…」
きゆがそう呟いてしまうほどに、そのツリーはきゆの背と同じくらいに大きく、装飾品も色鮮やかでバランスよくギッシリと飾られている。
「俺だけのためにしては本当に大きすぎるよな。
俺にはきゆみたいな彼女がいるからいいけどさ、本当に独り者で彼女もいない奴だったら、なんか、毎日これ見て凹みそう」