君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは何も言えなかった。
自分の気持ちはもうぶれることはないと思っていたのだが、流人に渡された婚姻届の用紙はきゆを困惑させた。
「それは…
今すぐってわけじゃないんだ」
流人はきゆの様子を伺いながら、でもはっきりとそう言った。
「それはここの役場に提出する用紙だけど、まだ、俺がここに居る期間は3か月ある。
その間にはきゆが納得できるようなシチュエーションにしていきたいと思ってる。
親父達に分かってもらえるように、何度も話してみる。
俺の理想はこの島で籍を入れたいんだ。
俺の名前はもう書いてあるから、後はきゆの名前を入れるだけ。
きゆが預かってて…
お互いが納得できたら一緒に出しに行こう。
この島にいる間に、それでも納得できなければ破って捨てればいいことだから」
きゆはもう一度その婚姻届に目を通した。
「うん、分かった…
私もちゃんと考えるから…」
「いや、考えなくていいよ。
考え過ぎたらきゆは潰れるタイプだからさ。
どっちにしても俺ときゆは結婚するんだ。
ま、親父達の件は俺にとっては本当はどうでもいいんだけど、きゆのために努力するから、そんな俺をちゃんと見てて」
きゆは静かに頷いた。
そして、その封筒を大切にバッグにしまった。
「よし、じゃ、今から飲むぞ~~
きゆがお泊りなんて、もう最高に嬉しいんですけど」
クリスマスイブからクリスマスに変わる夜、この島に来て初めて二人は夜を過ごす。
病院の院長室の狭いソファの上じゃなく、温かくて大きなベッドの上で…