君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「でも、それは流人君が考えることではないよ。
君は有能で将来が楽しみな医者だ。
世界へ羽ばたいて、もっともっと日本の医療レベルを上げる役目がある。
1月に私が島に帰ったら、君はいつでも島を出て行っていいから」
流人は驚いた顔で院長を見た。
「でも、僕は、3月いっぱいは田中医院に勤めることになってるので…」
院長は優しい眼差しを浮かべて、顔を横に振った。
「私と家内は本当に流人君には感謝してる。
感謝してもしてもしきれないくらいにね…
さっき、君からあの島に赴任した本当の理由を聞いても、そんな事は私達にとってはほんのちっぽけな事なんだよ。
きゆちゃんは小さい時からよく知ってるし、そのきゆちゃんを追ってきたなんて、最高にいい話じゃないか。
それで、田中医院も島の人々も助かった。
役場の人達から聞く話は、君の誉め言葉ばっかりだ。
もうそれだけで十分だよ、だから、私が帰ってきたら、今度は自分のやるべきことをやらなきゃ。
君はあの島で満足してはいけないんだ」
流人はどうしても院長の目が見れなかった。
「院長先生の心臓の具合を聞いて、また、いつ発作が起こるか分からない状況なのに、僕は心配で先生の事も病院の事も放っておけないかもしれません…」