君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
田中院長は静かに目を閉じ、しばらく何かを考えていた。
隣に座る奥様も、やはり同じように何か考えている。
「流人君、君は本当にいい子だ。
だから、きっと、きゆちゃんみたいな素朴な子を好きになったんだね。
君の未来は君のものであって、私達がとやかく言う事ではないけど、でもね……
君が守るべきものはあの島ではないと思うんだ。
もし、私が病院をたたんでも、きっとどうにかなる、大丈夫だよ。
だから君は、君の守るべきものをちゃんと守りなさい。
それは言わなくても分かるよね?」
流人は下を向いたまま頷けなかった。
そして、一月になり、院長夫婦はこの島へ帰ってきた。
「院長先生、流人です」
流人は院長室をノックしてそう言うと、中からおいでと声がした。
きゆは受付のカウンターで、奥様に今までの事務関連の書類を見せたり忙しくしていたので、流人はさりげなく院長室へ向かった。
「どうするか、決まったか?」
院長は流人の顔を見るなり、そう聞いてきた。
流人はしばらく黙っていたが、院長の目を見て静かに頷いた。
「院長先生、お願いがあります…」