君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人がいなくなったこの島は、どことなく寂しさが漂っていた。
流人が東京へ帰ったいう噂はあっという間に小さな島中に広がり、一人残されたきゆは流人にフラれたと言い回る人達もいた。
病院を訪れる人達も、きゆを見て切なそうな顔をする。
きゆは、そんな人達に、私達結婚するんですと声を大にして言いたかったが、いつも笑顔を浮かべてその言葉を飲み込んだ。
ちゃんと結婚をした時に皆に報告すればいい。
流人を信じて、ただひたすら待つことが今の私には大切なこと…
きゆが毎日の仕事を淡々と済ませているそんな中、院長先生の奥様から夕飯の誘いがあった。
きゆが院長宅を訪れると、ダイニングのテーブルにたくさんのご馳走が並んでいる。
「きゆさんにいつかはお礼をしなきゃって思っていたの」
「お礼ですか?」
きゆはダイニングに入った途端、直立不動でそう聞き返した。
「そう、あんな素敵で有能な流人先生をこの島に呼んでくれたから」
院長夫婦は二人で目を合わせ笑顔になった。
「流人先生から、二人の経緯は聞いているの。
きゆさんがいてくれたから、私達は、特に主人は、心置きなく心臓の治療に専念することができた。
本当にありがとう、心から感謝してます…」