君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは思いがけない言葉に驚いてしまった。
「流人先生が私達の事を?…」
院長夫婦は同時に大きく頷いた。
きゆは動揺しながらも、流人の心遣いに思わず涙が溢れる。
流人がいなくなってからの寂しさや、世間の目を浴びている居心地の悪さなど、そんな心のつかえが取れていく魔法の言葉をもらったようなそんな気分だった。
「きゆさん、私達もあなた達と似たような境遇で結婚した二人なのよ」
「え、院長先生と奥様がですか?」
きゆは涙を拭いてそう聞いた。
「そう、私は埼玉にある病院の娘で、主人はこの田中医院を継ぐべき跡取り息子で、私がこの小さな島に嫁ぎたいって言ったら両親にもの凄い反対をされた。
で、反対を押し切って結婚をしたの」
「それで奥様のご両親は、いつかは許してくれたんですか?」
奥様は下を俯いて静かに首を横に振った。
「今みたいな時代じゃないから、中々、実家には帰れなくて、何となくは許してもらえてたような感じはあったけど、その事についてちゃんと話す機会もなく、両親は他界したの。
だから、今回、流人先生が、きゆさんとの結婚を認めてもらえるように、ご両親と向き合って話し合いをすることには大賛成したわ。
逃げない、投げ出さない、結婚するっていうのはそれだけ大変な事で尊い事、どういう結果が出ようとも、しっかり自分の気持ちを伝えてきなさいってそう伝えた…」