君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜

「島の人達に誓って約束します」




2月は天気が悪くみぞれの降る日が多かった。
2月に一度帰ってくると言っていた流人だったが、急にボストン行きが決まり2週間ほど日本を離れることになり、島へ帰ってくるという約束は流れてしまった。

でも、きゆは、落ち込んだりはしない。


「きゆ、いきなりで悪いけど、島を出てからの二人の生活のスタートは、ボストンになりそうなんだ。
以前からそこの大学に留学希望を出してたんだけど、この間提出した論文で条件をクリアできたらしい。

春からは一緒にボストンに行く、きゆもそのつもりで準備しといて」


流人から3日前にそう電話が来た。
きゆにとって住む所とかは別に関係ない、流人と一緒に未来を歩めることが何よりも望んでいることだから。
でも、その電話でも、流人は両親との話し合いの事は何も話さなかった。
きゆの方からは何も聞かないし、ましてや、問いただしたりは絶対しない。
何か進展があれば、必ず流人は話してくれる。
正直すぎる流人の性格は、両親と何も進展がないことを無言の内に告げていた。

きゆにとってその問題に進展がないということは、心臓をわしづかみにされ潰されるようなそんな痛みを伴うほどの苦しみだった。

大好きな流人のお父様とお母様に認められたい、祝福されて結婚したい……
お世話になった恩人の院長先生と奥様だからこそ、笑顔で受け入れてもらいたい……


でも、きゆのその願いはきっと流人の両親には届かない。




< 148 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop