君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「池山先生、彼女は田中医院で看護師をしている足立きゆさんです。
これからは分からない事があれば、何でもきゆさんに聞いて下さいね」


流人は何も知らないふりをして、きゆによろしくと言った。
きゆも丁寧に頭を下げ、こちらこそと流人の目は見ずにそう答えた。

流人は役場の人達からの色々な説明を受け、やっと田中医院と書いている車に乗り込むことができた。
車の鍵は開けっ放しになっているけれど、きゆの姿が見当たらない。
流人は勝手にそのワゴン車に自分の荷物を入れ込んだ。
そして、助手席に座って待っていると、足取り重くきゆが帰ってくるのが見える。

きゆは何も言わずに車に乗り込み、エンジンをかけ、聞いた事のないような音楽を鳴らした。


「じゃ、病院に向かうから」


そう一言言うと、きゆはもの凄いスピードで車を走らせた。
まるでタクシーの運転手にでもなったかのように、ひたすら運転だけをしている。


「きゆ、久しぶりに会ったのに、何、怒ってんだよ」



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