君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



流人は港で皆の歓迎を受けたあと、きゆの運転する車に院長夫婦と一緒に乗り、病院へ向かった。
車の中では、院長夫婦の止まらぬ質問に、流人は一生懸命に答えた。
ボストンで何を学ぶのか、自分の目指す医療とは何かとか、院長夫妻は目を細めて流人の話を真剣に聞いていた。


「じゃ、自宅へ行って、ちょっと片づけをしてきます」


きゆと流人は院長夫妻を病院で降ろし、あの人里離れた自宅へ向かう。
流人は早くきゆと二人っきりになりたくてしょうがない。なぜなら、島に着いてからというものきゆのそっけなさにちょっと落ち込んでいたから。

流人の自宅に着ききゆが窓のカーテンを開けた途端、流人が後ろから抱きしめてきた。


「きゆは俺が帰ってきても嬉しくないんだろ?…
それか、2月に島に帰って来れなかったから怒ってる?」


きゆは振り向き、流人の顔を見て優しい笑顔を向ける。


「そんなことこれっぽっちも思ってないよ。
それより、もう私と流ちゃんの事は、この島のビッグニュースになってるんだから。
私達が話す一語一句も全部、皆が耳を澄まして聞いてるんだよ。

だから、ちょっとクールな女を装ってみただけ」


きゆは流人を抱きしめた。


「流ちゃん、おかえり…
ずっと、いい子で待ってたんだから…」




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